シマノ ジャパンカップ 投(キス)釣り 東海大会 A
Text by Jelly
東京スナメをGETしろ!

7月13日、明日はシマノジャパンカップ東海大会。私は餌の確保をどうするか悩んでいた。当日は朝5時エントリー6時には試合開始、余裕を持って準備するには5時少し前には会場の静岡県沼津市原海岸に到着していたい。自宅の横浜からは車で東名高速を使って約2時間かかる。エントリーした小田原市の宮島屋釣具店は朝6時過ぎないと店が開かない。いつも早朝から釣りをする時に餌を買っている二宮町の森釣具店でさえ店が開くのは4時半くらい、それから高速に戻っても到着するのは5時半を過ぎてしまう・・・6時試合開始に臨むにはあまりにあわただしすぎる。困って森釣具に電話してみた。
「あのー、店開けるの4時半くらいですよねえ・・・」
「はいそうですが」
「明日シマノの大会があるんですけど・・・」
「ああ、ジャパンカップね!で、何時ごろ開けとけばいいの?」
「出来れば3時半過ぎにはそこを出たいんですが・・・」
「いいですよ!」
やった、良い人だなあ
「で、東京スナメを2パックほど欲しいんですが」
「ああ、ありますよ、用意しときましょう」
東京スナメ!得に型の良いキスを狙う時の必殺餌だ。大会で上位入賞する人は必ずこの餌を使っている。しかし関東では置いている餌屋が少なく手に入れるのが大変だ。大会の会場となっている沼津の原海岸は太平洋に面したドン深の海岸で大型が入るのが魅力の場所だ。というより型の良いキスが多いのでそれを狙って釣らなければまず決勝には進めない。まずはこの東京スナメ(キボシイソメの一種、関西方面ではチロリといいますね)を手に入れるかどうかが勝敗の第一条件といっても過言ではない。大型キスを狙うにはほかにも青虫や細目の本虫もよいが、原海岸は圧倒的に遠投有利な場所である。しかも海岸がゴロタ岩で敷き詰められた浜なので丁寧に回転投法で投げられない。一気に力を入れる投げ方で投げなくてはならないため、適当な太さで身切れし難く、キスの大好物という餌をチョイスしなければ勝てないのだ。これでまずひと安心、明日を戦うことが出来る。あとは明日休むために仕事を片づけなければならない。ひととおりやり終えて深夜帰宅、ベッドについたのは午前1時、後1時間半しか眠れない。当然のごとく気も高ぶって眠れないし寝過ごしては大変だ。静かに目を閉じて明日の戦いをシュミレーションする。悔いの無い試合がしたい。浅い眠りに入ったと思ったらすぐに目覚ましのベルが鳴った。

東名フリーウエイを飛ばして!

シャワーを浴びていざ出陣!一路東名高速を目指す。途中のコンビニで買ったカプチーノとチョコレートパンを食べながら、さっき目を閉じてシュミレートした仕掛けを思い浮かべる。最後まで悩んでいた力糸の選択が決まる。イメージは出来た、あとは現場の状況次第だ。秦野中井インターで降りて森釣具店を目指す。ちょっと早いかな?しかし到着するともう店は開いていた。
「電話で東京を予約したものですけど」
「ああ、用意しといたよ、なるべく太くなりすぎてないやつがあるから」
ありがたい!ここの釣り場で勝つには最高の条件の餌だ!近投の夜釣りならば太目でも良いが、遠投だと飛距離が落ちる。凪げにくい海岸だがそれでも最低6色以上は投げたい!
「ありがとう、おじさん」
「ああ、がんばってね!」
店を出て再び東名高速に戻り、一路沼津へ、ほとんど車も無く快調に飛ばす。4時少し過ぎに沼津インターに到着。市内を抜け原海岸の会場本部前に5時前に着くことが出来た。

状況を読み、戦略をたてろ!

大会の申し込み用紙を持ってエントリーする。ゼッケン163番。見渡すと200人近い人がいる、きっと250人くらいなるのだろうな・・・皆クラブの仲間と談笑しながら一時のゆったりとした時間を過ごしている。わかってはいたのだが孤独感が襲う。今回は我がLKサーフのもう一人のクラブ員、国が仕事でアフリカに行っていて一人なのだ。(なんと我がLKサーフは2名の弱小クラブなのだ!しかしながらこの2名、先の関東大会では2名とも決勝に出場!しかも国は関東予選1位、決勝4位私は13位という自称少数精鋭クラブなのだ)大会においては仲間との情報交換も重要だ。しかし今日は仕方が無い。まずは下見と思いながら海岸に降りて行く。海岸に打ち上げられた大量の藻、流木、ゴミ・・・いつもは済んだブルーの海もにごりがきつい、うねりの残りもある・・・昨日は結構荒れたみたいだな、果たしてキスは海岸に戻っているのか・・・この状況では通常の仕掛けでは駄目かもな・・・早速車に戻り仕掛けを選び整理する。竿はシマノスピンサーフSCのBX!とにかく遠投重視だ。極端に胴調子の堅い竿だが、今日のような一気に力を入れて振りぬかなければならない場所には最適だと思っている。しかもドン深のこの海岸、そこはジャリ浜では繊細な誘いはあまり必要ない。リールはシマノパワーエアロEV、スプール4号用に1号のPE糸が巻いてある。細かい藻が多いかもしれないので力糸はナイロンの3−14号、重りはカイソー天秤27号、仕掛けはとりあえずホンテロン1・5号のモトスに1・0のアクアキングハリス4本針、針は堅くて先が痛みにくいかついちのプロサーフ7号を用意した。ハリス間隔を40センチほどとった仕掛けで大型狙いだ。タックルをいれるポーチにはこんな時のために持っているガン玉B、そして蛍光ハリスの仕掛けを用意する。この夜釣り用の仕掛けがあとでものをいうことになる。さあ、準備は整った。国は今ごろケニヤの空の下でライオンと戯れているのかな?大会に出たかっただろうな・・・と思いながら煙草を吸っていると6時の合図。いよいよ決戦だ!   

予選!マナーを守ろうぜ!

タックルチェックをすませ、いよいよ各自思い思いの場所に移動する。本部の下にある排水溝を中心に東西に2キロこの中に約250人が散らばって行く。この中から決勝に出るのはわずか20人、厳しい戦いとなりそうだ。移動開始の合図と同時に9割近い人が排水溝の西、清水市側に移動する。まあ予想通りの展開だ、過去の実績から見ても西側しかも排水溝から500メートル近くはなれたあたりから清水側にかけてが大型が出やすい。ここのキスは太った体型のキスが多く、1匹大型を釣れば一気にグラム数が稼げる。今日のように前日まで荒れた天候だと数が伸びることは考えにくく、おのずといつも以上に大型1匹の価値は高い。25センチオーバーがくれば下手すれば2匹程度でも決勝進出してしまうかもしれない。
「コリャ込みそうだな・・・」
少し悩んだ末、やはり私も清水側へ行くことにした。海岸横の道路を皆歩く歩く、15分歩いても人の数が減らない。やはり皆大型が出やすいポイントを知っているなあと思いながら約20分ほど歩いた地点に入る。かなりの込み具合だ。しかしここはよく地引き網を引く場所で、かつてこぼれたシラスを食いに来た良型キスを爆釣したことがある場所だ、自分としても譲れない。ポイントに着いたとたんに開始の合図!いそいで仕掛けをセットする。とりあえずは予定通りホンテロン1・5号のモトスにアクアキング1号ハリス、かついちスーパーキス7号の4本針仕掛けで始める。昨日の荒れからかいつも以上に足場が悪い。それをみこしていつもよりも第一針までの間隔が短め、約80センチの原海岸使用の仕掛けだ。いよいよ第1投,V字投法で約6色、良い感じだ。しかし当たりも無く、仕掛けを上げてみるとまったく餌が取られていない。
「餌トリもいないか、今日は濁りもきついし難しそうだな・・・」
気を取り直して第2投、3投と繰り返す。5投目にかすかなあたりを5色半付近でキャッチ!17センチ程度のここでは小型のキスだ。続けて3人隣先の人が同じくらいのキスをあげる。とりあえず見える範囲ではこの2人しか釣れていないが、時合到来かと急いで投げる。ゆっくりさびいていると、なんだか人が少しづつ近くによってくる。開始から1時間少々たってあたりも無い人がほとんどだしなあ、でも投げつらくなるとなあ・・・などと思っていると更に数人先で20センチ近いまあまあの良型がヒットする。これが最悪の結果を招く。なんとどんどんとこちらに人が来るではないか!ひどい人は私の後ろから遠投している。頭の上をビュッと音がして重りが飛んで行く。ヒエー頼むよおい、危ないだろう!!後ろを向いて注意しようとするが斜めに投げたのかすでに7メートルほど離れている。しかしその時グッドな当たり!これはデカイと巻き上げるとなんだか様子が変だ・・・仕掛けがからみ、3人先ぐらいの人と絡んでいる。またこれが道糸に絡むようなひどいからみ方で10分近くロスタイムしてしまった。
「斜めに投げても良いからその位置に移動すればこんなことにはならないのに・・・」
仕掛けを交換している間にまたさっきの親父が後方から投げ始めた。あまりに釣れないので皆目が血走っている。マナーの良い人がほとんどだが、1匹釣ってしまったために変な人を呼びこんじまったか・・・トーナメントとはいえ私は戦いながらも楽しい釣りがしたい。こんな中で苛々しながら自分の釣りは出来ない。しかし一応見渡す限りはこのエリアがやはり釣れているのだが、どうしようか・・・正直悩んだ。

男の決断!移動

「よし!移動だ」
急いでタックルをまとめ足早に場所を移動する。周りは驚いた様子で見ている。「急がなければ」排水溝より清水側では込み具合はさほど変わらない、どうせ移動するならば人の少ない所で思い切り投げたい。なんといってもこの海岸では遠投が有利だからだ。しかし人が少ない排水溝の東側、沼津方面に行くにはゆうに20分以上かかる。これから急いでも残りは後1時間無いだろう。「まあいいさ、試したい仕掛けもあるし、自分が納得いく釣りをやるまでだ。これほど釣れてなければ5匹くらい釣ればつぎへ進めるかもしれない。後4匹、ダブル2回でOKさ!楽天的な私は鼻歌を歌いながら移動する。しかし10分歩いても目指すポイントはまだまだ遠い、やはりトーナメントの最中ゆえ焦りが出始める。
「よし、走ろう!」
思いタックルを抱え全力ダッシュ!7,8分走ってやっと目的のポイント排水溝の東脇に到着する。シマノの係員の人が大変だなあといった感じで見ている。すでに息は上がってへとへとだ。急いで仕掛けをチェンジ、ホンテロン2号のモトスに、ホンテロン蛍光色黄色の1号のハリスの仕掛けに変える。針は同じくかついちのスーパーキス7号、濁りがきつい時の仕掛けだ。普段は蛍光ハリスがフグを呼ぶため使わないが、今日のきつい濁りでは有効かもしれない。とにかく皆あまり釣れてなさそうなので人と違う仕掛けにしてみよう。移動後第1投、疲れて足が乱れて5色しか飛ばない。
「まずい!」
しかし時間が惜しいのでとりあえず1色丁寧にさびく。当たりなし、ためしに3色までさびく。仕掛けを上げるがなんと餌がそのままだ!
「ここの名物のハオコゼすらいないのか・・・?」
仕掛けを良く見ると針が少し絡んでいる。こころなしかうねりも少し強くなった気がする。
「そこで潮が巻いているのか??」
試しに底潮がきつい時の必殺技ガン玉打ちを試みる。3点、Bのガン玉を打ち投げる。やはり疲れからか5色半、
「やばいな・・」
と思いつつも極力丁寧にさびいて4色半でうれしいキスらしい当たり!小さいけれどもきっとキスだ!波打ち際でばらさない様波にのせて丁寧に引き上げると、なんとダブル!小型とピンギスだが嬉しいダブルだ!
「ちょっとグラム数ではやばいかな・・?」
と思いながらも俄然やる気が出る。元気も出て遠投、6色弱、飛距離も出る。しかし検量時間まで10分ちょい、このままでは勝ち目が無い。楽しく自分の釣りがしたいといったものの、やはり行ければ決勝にはいきたい。今年5月に行われた関東大会で初めて決勝に出た。決勝では1匹しか釣れず20人中13位だったがトーナメントを勝ち抜く緊張感、決勝後の表彰式ととても素晴らしい雰囲気を味わった。
「またぜひ経験したい!」
心の底からそう思った。シマノジャパンカップに出始めて5年、今年は始めて関東、東海2大会にエントリーできた。時間に厳しい仕事柄出場できない年もあった中、LKサーフという2人しかいないクラブ(クラブといってよいのか?)で腕を磨いてきた成果が出始めたこの年の勢いをこの大会にも持続させたかった。今回一緒に出場するはずだった国は仕事でアフリカに行かねばならず出ていない。関東大会で4位という好成績を修めた彼こそ本当に出たかったに違いない。奴のためにもここで諦められない!さあ、もう1投と思い竿を構えた時10メートルほど先で釣っていた人が納竿して検量にいく途中声をかけてきた。
「どうですか?」
「ええ、ほんの今2匹釣れて」
「良いですねえ、私は1匹でした。こっちもあまり釣れてないし、向こう(前半にいた清水側)の友達と携帯で話したけど、連れた人でも7匹程度らしいですよ。お宅は?」
「まあ、小さいけど3匹です」
「そりゃあ可能性ありますよ、おっと邪魔しちゃいましたね」
「あなたはもう止めるんですか?」
「ええ、1匹じゃあね」
「じゃあもう1投げ、頑張ってください」
そう言い残して彼は歩いていった。残り10分 、5分さびいて、2分でかたずけて、ここから本部はすぐそこだから走ろう!