検量が目標だった鶴見予選で思いがけず5位入賞を果たし、決勝大会進出まで決めてしまった俺は大会2日前から下見と練習も兼ねて仲間と鶴見入りしていた。決勝大会が行われる場所は予選と同じく鶴見。ダイコーの製造工場がこの鶴見近郊にあるためらしい。昨年、初めてトーナメント参加を開始した俺だが、この時点ですでに二回目の全国大会進出。この驚異的快挙に我がクラブのサーフ部長ジェリーが驚喜したことは言うまでもない。彼はファンタジックな出来事を座右の銘にするくらいな男で、今回の大会に応援に来てくれることになった。
第1回 ダイコーFFGPグレトーナメント 決勝大会
Text by Klaris
1月16日、夜。俺とタシケンは大分県湯布院のペンション『ももたろう』でジェリーと合流。一路、鶴見を目指した。練習釣行初日だけだったがクロモン氏も急遽参加、彼がジェリーと実は高校の同級生であったことがこの後判明!(詳しくは釣果報告「同級生」を参照)全く釣れない悲惨な状況下、クロモン氏だけが良型のグレを連発、氏に見習いトリプルゼロでの完全フカセスタイルを採用することにした。とにかく仕掛けをある一定のタナまで一気に沈め、そこで仕掛けを張ってゆっくり沈め、再び張って・・・を繰り返していく。00での釣りはやったことがあるものの、この釣り方は全くの初心者である。自信などあるはずもない。しかし、他の方法に打開策が見出せない今、この沈め釣りを本戦で試す以外に頼みの綱がないのである・・。


1月19日決勝当日。午前2時に渡船『速見丸』乗り合い所前に到着した。会場にはダイコーの旗が何本もはためき、出場選手と思しき人々の赤と黒のコントラストが異様な揺らめきを見せている。この日は大潮。満潮が8時29分、干潮が14時08分。水温は16.1度である。


エントリー総勢433人中、予選大会を通過した21名とダイコー推薦のフィールド・テスター11名、計32名で日本初の『オールリーグ戦』を行う画期的な大会が、今、ここで行われようとしている。俺は受付場所のテント前で抽選箱に手を入れ、番号札を引き出した。グループB-1、ゼッケン29番。1グループ4名、8ブロックに分かれ、それぞれのグループで3試合戦い、その総重量、総合ポイントの一番高い選手が2回戦準決勝に駒を進めることが出来る。

ポイントの換算方法は、25cm以上のグレを釣った勝者には10ポイント、25cm以上のグレを釣った敗者には2ポイント、25cm以上のグレを釣れなかった敗者は0ポイント。両者とも25cm未満のグレしか釣れなかった場合には先掛け方式を採用。勝者には7ポイント、敗者は0ポイント、両者釣果なしの場合には両者に1ポイントが与えられる仕組みだ。私の組、グループB-1は吉永金之助選手、中原健一郎選手とテスターが1名。九州の釣り番組をリードし続けているタレント安田栗ノ助さんと仲の良い力武信也選手である。

最近知り合ったフィールド・テスターの方でサンラインと三太郎のテスターをなさっている藤木伸行さんがいる。今回の大会も藤木さんは激戦区九十九島予選から勝ち抜いての参加だ。
「クラリスさんに負けるワケにはいかんからなあ・・。」
テスターの意地とプライドから出る言葉だ。当然、俺に負けるのはマズイだろう。しかし、勝負の世界は何が起こるか分からない。大会に出る事への緊張感は未だあるが、勝負に対するそれは今のところそれほど高くない。こういう時期に偶然でもいいから一勝しておきたいものだ。テント前で藤木さんと談笑しながら時を待つ、以前の大会でまるで知り合いがいなかったことを考えると夢のようだ。その上、ジェリーとタシケンの2カメラマンがいるので別の意味では恥ずかしいが、意外と楽しくもあった。


ダイコー・フィールドテスター陣の中に田中釣心氏の姿もあって、タシケンを引っ張っていきご挨拶。以前、対馬釣行の折り、偶然釣心氏ご一行と同じになりデジカメで写真を撮っていただいた上、それをパネルにしてプレゼントしていただいていた経緯もあったからだ。
「いやー、そんなこともありましたねえ・・。」
と、しっかり憶えていてくださってタシケンは感激である。その隣に偶然居合わせた人物が力武選手だった。藤木さんとは仲が良く、紹介して貰い色々と情報交換させてもらう。釣心氏も研究中のサスペンド釣法をG2のウキで行く様子だ。

一回戦

渡船『しんえい丸』が瀬付けした場所は当番瀬の『カタヘラバエ』。
“ここが俺の戦いのステージなのか・・。”
磯に立ち辺りを見回すと、ある種の感慨が溢れ出るものだ。対戦者の吉永金之助選手にいち早く挨拶。このハッキリと挨拶しておくということは変なプレッシャーを和らげるのに効果的だ。審判の人が、「ここは朝マズメに大きいのがきますよ。」とハッパをかける。
“そりゃあ、出来ればデカイのを釣り上げたいのはヤマヤマさ。”
試合開始の7時までは1時間半も時間があるため、持参した朝飯を食べて時を待つ。夜が明けぬ岩場の上で待つ時間は非常に長く感じられた。待ちきれなくなったので仕掛けを作り始める。ロッドはダイコーのFull Field 砕波(さいは)1.5号530、リールはダイワトーナメントZ-LBCDの2500、ラインはバリバス・バーマックスのサスペンド2号、ハリスはサンライン・トルネードVハード1.75号。ウキはキザクラGTR-000 KAZU競技。鈎はがまかつ競技ヴィトムの6号。朝マズメのデカバン対策だ。審判が白い紐のようなもので境界線を決める。この境界線を仕掛けが越えてはいけないのだ。
「潮下の方が断然良さそうやねえ!」
吉永選手も良く喋る。時間もせまってきた、釣り座を決めなければならない。決め方は釣り用語で言うところの《抽選》、つまりジャンケンである。
「最初はグー!ジャンケンポン!!!!」
いい大人が凄い気合いでジャンケンにのぞんでくる!俺は最初からずっとグーだけ出すつもりだったので、予定どおりのグー・・・。
“勝ってしまった・・。”
ジャンケンに勝って潮下の釣り座を選択。足場は余り良くないが、非常に釣れそうなポイントだ。相手選手もこちらの釣り座になみなみならぬ興味を持っている。なんとしても1尾はあげたい!!

午前7時、審判のホイッスルとともに瞬間は訪れた。足元のサラシにマキエを数投し、竿一本沖に仕掛けを投入した。再びマキエをサラシに数投、ある程度まで仕掛けが沈んだら少し手前にラインを張ってやる、こうすることで仕掛けも際に馴染みマキエと同調する。朝の一発は殆どギャンブルで足元のサラシの際を狙うことにしていた。捕れるかどうかはわからない、
「掛けるのが先や!ブチ切られは覚悟の上!!」
何処かで聞いたことのある台詞を呟きながら仕掛けをどんどん入れていく。その時・・・!!一瞬にしてラインが直線になった。
「!!!」
一気に竿に乗り、もの凄い勢いでのされそうになる。やりとりもヘチマもない!両手で竿を押さえ込むので精一杯である。トーナメントZ-LBCDのドラグは鳴りっぱなし。そしてあっという間にラインからぶっつり切れた・・。

朝一での大バラシ!頭に血が上る!手がブルブル震える!!
「ホントにデカイのがきやがった・・!」
仕掛けはラインから切れたため、ゼロから作り直しである。俺は結構冷静に試合にのぞめている事に安堵していたが、手足に震えが走りどうしようもない。
「マズイ!!落ち着け!!!」
懸命に手の震えを押さえようとするが、そう簡単には治まらない。誰が見ているワケでもないのだが自意識過剰とは厄介な代物だ。それでも前半終了間際に30cmクラスの口太をゲット。一匹釣って場所交代。相手はこの時点でゼロだ。
“ひょっとしたらこのまま1対0で勝てるんじゃないか?”
淡い期待が脳裏をかすめた・・・が、勝負の世界はそんな甘いものではなかった。潮上の釣り座は全く釣りにならないうえ、相手選手はこぶりながらも3尾ほどのグレを手中に収めていた・・・。

二回戦

“やはり勝てなかった・・。”
しかし、勝たなくて良かったのかもしれない。奇妙な心理が交錯する中、渡船に乗り込み次のステージに移動する。磯の名は『ビシャゴ』。ここもどうやら当番瀬らしい。隣の磯ではテレビクルーや釣り雑誌の記者が目当ての釣り師に張り付いている。俺のグループはそういうのが居なくて幸いした・・。このステージでもこちらからいち早く挨拶、一言二言と言葉を交わす。意外とこの一言二言で対戦相手がどういう心理状況かわかるものだ。この選手はまだ多少緊張していることがわかった。一回戦で力武選手にコテンパンにやられた様子だ。こちらも一回戦でしなくてもいい動揺を体験してしまったので、この時点でかなり開き直っていた。
「もう、どうにでもなれ!」
試合開始、俺は足元から深場を全層でくまなく探っていく。殆ど潮が動いていないためサシエを先行させられない。取り敢えず、一気に沈めて仕掛けを張り直してまた沈める、という方法で探るがアタリがとれない。相手がクロだけに仕掛けが馴染む前に居喰いされてしまうと手も足も出ない。徐々に沖に遠投し始める。先掛けルールをよく理解していない対戦者は掛かった魚がクロかどうかも分からないうちに「先掛け!!」と叫んでいる。上がってきたのは、あにはからんやベラである。これだけでもトーナメント慣れしていないことがわかる。しかし、その直後最初にクロを掛けたのはその対戦相手であった。サイズは30くらいか、こちらも真剣になる。こっちは舐めんなとばかりに気合いのやりとり!30弱だが、一回戦に続きキーパーをゲット。釣り座は潮が境界線から右沖に流れており、手前はドン深で潮が切れていないのであまり期待できない。そんな釣り座での一尾ということも己を勇気付けた。釣り座交代で潮切れの良い方に入った。これはチャンスだ、初勝利の可能性が膨らんでくる。結局、両者何も釣れずフィニッシュ。検量である。30g差で敗退。再び2ポイント獲得。