第19回 シマノ ジャパンカップ 投(キス)釣り セミファイナル
Text by Jelly
シマノジャパンカップ投げ釣り選手権は今年度からセミファイナル大会という新しい戦いを設けた。全国で行われる地区大会で出場権を得た64人がファイナルを目指して争うもので、その中から9人が全国ファイナルに出場することが出来る。おそらく全国ファイナルはこの9人にシード選手4人、招待選手3人を加えた16人で戦われると思われる。このセミファイナルの記念すべき第1回が6月8日日曜日、福井県三里浜で行われた。『LK SURF FMA』からは昨年の九州大会で4位に入り、セミファイナル出場の権利を得ていた私、ジェリーが参戦。すでに今年のJC投げ第1戦、5月17日の中部大会9位で獲得来年度の権利を得ている國も応援兼下見で一緒に福井に向かうことになった。
6月5日、22時。仕事を終えて横浜の國宅に集合。川崎インターから東名高速自動車道に乗り、まずは小田原を目指す。しかし、なぜ遠回りして小田原へ向かうのか?向かった先は我々が世話になっている小田原の宮嶋屋釣具店。福井に向かう我々のために専務が23時まで起きて待っていてくれるという。朝早い釣具店、夜は辛い筈だ。専務の思いに感謝感激である。ここで買うのはチロリというキボシイソメの一種の虫エサだ。専務の奥さんが細い状態の良いものを選別して選んでくれている。本当に有難い。このチロリというエサは大型キスが好む虫エサで、重量で競うトーナメントでは欠かせないのだ。しかし店によっては太いものしか置いてなくキスに使えなかったり、またデリケートな奴なので状態が悪いとすぐに死んでしまう。もちろん死んで白くなった奴にはキスは見向きもしない。今回の我々の重要なテーマのひとつがこの『エサの確保と保存』。後悔しないためにも準備は怠り無く妥協しない。わざわざ高速道路を下りてまで宮嶋屋に行く理由である。
まずは購入したエサを店で使っている海水で洗う。この海水は近くの海で汲んできただけの普通の海水であるがエサと同じ冷蔵庫に入れてあるものだ。虫エサは温度の変化を嫌う。このチロリなどは急激に温度変化するとすぐに死んでしまったりする。昨年の九州大会ではこの温度管理に失敗し、大会前日まで元気だったのに当日全滅していたことがあった。虫エサの中でもこのチロリはデリケートで扱いにくいのだ。またストレスを感じた虫は体の表面を守るために粘液を出す。これを放っておくと他の虫に悪影響が出るため、まめに洗って割り箸などでひとつひとつ粘液の塊を取り除いてやらねばならない。エサの準備を終え、表面に空気穴のあいたタッパーウエアにエサを小分けし店を出る。2リットルのペットボトルに店と同じ海水も貰ってくる。明日の朝、エサを洗う為のものだ。大型クーラーにエサ、海水、新聞紙に来るんだ氷を入れ温度計を入れて出発する。適温は15度から18度前後。上がりすぎても下がりすぎても良くない。とりあえず前半は環境を変えた後なので2時間おきに温度チェックすることにした。ここまでやるのかと思うかもしれないが、トップキャスターは皆やっているのだ。我々が今までルーズだったというだけに過ぎない。勝利への第1歩はこうした地道な努力なのだ。東名高速道の途中浜松P.A.でうどんを食べエサの状態をチェック。約18度、安心する。米原I.C.から北陸道に乗り福井北I.C.で下りる。そのまま越前海岸方面を目指し朝の6時半に三里浜へ到着した。
三里浜は4kmほどの海岸で、テトラが埋めてある左の2kmと何も無い2kmに分かれている。さあ、砂浜のチェック!しかしそのまえにエサのチェックをわすれずに!温度も適温内、しかしクーラーも揺れるだろう、エサも長旅の疲れか結構粘液をだしている。
「お前も疲れたなあ・・・さあもう福井だよ。しばらくは揺れないからね。」
話しかけながら粘液の塊を丁寧に肌を傷つけないようにとる。少し痛んだものは血を出し、その血がほかの連中を弱らせるので元気で傷の無いものとそうでないものをここで2つに分ける。本当にデリケートな奴だ。こう書くと私がまめにやっているように見えるが事実はだいぶ異なる。エサの確保、健康状態にこだわり細心の注意を払っているのは國なのだ。私は國に言われた仕事を忠実にやっているに過ぎない。國はエサを生物学的に研究しこだわっている。これまでほとんどエサの事しか書いてないが、今回、我々にとってエサの保存はかくも重要なテーマだったのである。魚がそこまでシビアにエサの鮮度を吟味しているとは思わないが、活きがよく動きの良いエサの方が魅力的だ。
全ては勝つため。どんな面倒も勝利の美酒には代えられない。
やっと、実釣である。今回のもう一つのテーマ『竿』。今年シマノが10年ぶりに出した『NEWキススペシャル』という竿、まだ出たばかりで性能がほとんどわからないのだ。しかし、キススペシャルはキス竿の最高機種、それが10年ぶりに更新されると聞いただけでシマラーなサーフキャスターなら申し込んでしまうのは当然である。しかし6月初頭現在、全国にはまだあまり出回ってないこの竿をやはり宮嶋屋の力だろうか、我々はすでに5月の頭に手に入れていた。せっかく誰よりも早く手に入れたのに仕事が忙しくて使ってなかったのだ・・・。まずは素直な感想から。
感度が良い!穂先が細くカーボンの質の向上だろうか?これまでの竿に無いセンシティブな感度である。具体的に言えば6色先の10cm程度のキスの当たりがしっかりとわかります。またメゴチの当たり、フグの当たりと魚種の判別がとても容易です。よってポイントの判断がすばやくなります。また魚の魚信という釣りの楽しさが増えるのもいいですね。また魚信の出方としては竿先だけでなく竿全体に微妙な振動として来ます。よって竿に手を広く添えていたり、足を当てていたりするほうが微妙な変化がわかります。これはオモリが地面を叩く振動にも言えることで、海底の形状把握もとてもしやすいです。
2番竿が硬い!よって竿先が柔らかい割に飛距離が出ます!私はC+という竿を購入しましたがこれで6色は軽く出ます。さらに飛ばすために力があまり要らないのも特徴!非力な人でも遠投を諦めなくて済みそうです。B+まではある程度の力と体格があれば投げられる感じですが、Aはかなり硬いです。しかしこれを曲げられれば8色は夢の飛距離ではありませんね!
持ち重りがしない。前のキススペより重いそうですがバランスが良いためだろう。今回のセミファイナルで痛感したが腕があまり痛くならなかったのは嬉しい。まあこれ以外にも色々特徴があるがそろそろ大会について書かねば編集長が怒りそうなので終わります。
いきなり翌日6月8日朝5時30分である。受付を済ませるとゼッケンと書類そして帽子をもらう。セミファイナル出場記念の帽子!どんなデザインかと楽しみにしていたが・・・まあ渋いかな。TEAM SIMANOとオレンジの刺繍の入ったモスグリーンのつばの帽子である。選手はこれを被って試合に出場しなくてはならない。そして試合エリアだが昨日のシマノの人々の下見で、先ほど少し書いた左手のテトラゾーンとその右ではあまりに釣果の差があるため右の釣れない方でのみ試合が行われることになった。この2kmに及ぶ右の砂浜を4つのABCDブロックに分けて戦うのだ。あるいみ公平ではあるがもっとも遠いエリアのくじをひくと2kmも砂浜を歩いてそれから2時間半戦わねばならない!これはしんどいよ!
さて試合方法だがこの4つのブロックに16人の選手が抽選で振り分けられ、その中で最も釣った人が1位となりポイント16を獲得する。2試合行い、ポイント上位9名がファイナルに進むのだ。で、抽選で私は嫌な予感通りブロックDを引き当てる。地獄の砂浜行進が始まった。・・・・・・30分近くも歩いただろうか・・・やっとDブロックに到着する。ここでゼッケンの若い順に釣り場を選択する。これもクジ運悪く最後の方である。地形の変化の大きいよさげな所にはすでに人がはいっている。
「どうしようかなあ・・・。」
やはりセミファイナルに来た楽しみといえば全国の有名な強豪と目の前で勝負出来ることだ。ふと視線に見たことある顔が目に入る。シマノのフィールドテスターで、TVでも投げの番組のときはいつも出演している大阪の強豪、日置選手だ。俺は投げ釣りのメッカ、湘南勢とはいえその末席だ。相手は大きいが燃えるものがある。それに釣りは運も勝負の行方を大きく左右する競技、もし善戦すれば大きな自信になる。セミファイナルでは相手との距離を8mとらねばならないという規則がある。俺は日置選手の隣8mに迷わず竿立を立てた。16人で争うとはいえ遠くの選手のことはあまり見えない。おのずと隣の選手の釣り、釣果が気になるものだ。
「今日は胸を借りてぶつかってみよう!」
試合開始は7時、2時間半の第1試合が爆竹の合図で始まった。地区大会では開始合図とともに仕掛けを投げていいが、全国大会では合図でエサをつけ始めるというルールで行われる。今回のタックルは竿=NEWキススペシャルC+の4.05m。リールはスーパーエアロXT-SS35ミリストロークで、それにシマノキススペシャルPE0.8号の道糸とPEの力糸13mを巻いている。オモリは昨日下見の結果富士工業のカイソー天秤27号が最も海底を引きやすいことがわかった。意外と浅い割に底がゴツゴツした海底なのである。仕掛けはモトスはDUELのプロ100カーボン1.75号、ハリスホンテロン0.8号で鈎はがまかつキススペ5号の7本鈎仕掛けで始めることにする。投げの大会では最初の1投げが特に重要!なにせ100人近い人間が一斉に海にオモリを投げ込むのだ、その後、魚はプレッシャーから食い渋るのはいつものことだ。1投げ目で2、3点魚をかけることが出来ればその後相手にたいして優位に勝負を進めることが出来る。
午前7時、試合開始。様々な情報からポイントが近いとわかっていたので3色手前に投げゆっくりと探り始める。2色からリール数回転のところで小さな当たり。そのまま1色までさびいてとりあえず魚を確認する。小さなキスだ。こんな極小キスを釣るのは忍びないが大会なので仕方が無い。2投目、まずは集中的に当たりがあった付近を攻める。底の浅い静かな浜だ。ほどなく魚が散るのはわかっているので手返しのスピードが大切だ。周囲はまだ1投目を探っている。小さいながら当たりを感知でき、最初の攻め場所を知ったのは大きい。
『ブルッ』
小さいが小気味良い当たりだ。ここで神経を集中!海底の砂の起伏をなでながら少しづつ誘いつづける。2点・・・・・・3点・・・、その後フグらしきあたりがあったので巻き上げる。昨年、九州の大会で良型をかけたにもかかわらずフグにモトスから切られて貴重な大型を逃したことがある。一瞬それが頭をよぎったのだ。
「よしっ!」
3点がけ!予想通り鈎が一つフグに食いちぎられていた。しかし幸先良いスタート、見渡す限りでは2人先の人が1匹上げただけだ。先行すると作戦も立てやすい。案の定同じポイントでは当たりは無くなった。2回ほど遠投してそのあとは逆に思い切り近場を探ろう。前半戦の戦い方が決まった。しかし、釣れるサイズも小さければ群れも小さい・・・。個体それぞれに食い気も活性もあるのだがいかんせんすごく魚が少ないようだ。エサの中心を動きの大きなジャリメに変える。しかもよく動く尻尾のほうを優先してつける。その後、遠投4色半では当たりが無く、波口狙いに切り替える。一斉のオモリ放射で手前に逃げてきたキスと捕食魚から逃れるため浅場に身を潜めている小ギスを狙うためだ。しかし、いかんせんエリアが狭いため個体数も少なく釣れない時間が続く。開始60分でやっと5匹。渋すぎる・・・しかし後で國に聞いたところによるとこのエリアではその時点で匹数TOPだったのこと!しかしその時の俺はそんなことを知るよしもなく個体の小ささと群れの少なさにあせっていた。
「釣れない・・・渋すぎる・・・。」
隣の強豪日置選手もまだ2匹ほどしかあげてないのでやはりこれはほとんど魚が居ないと判断すべきだろう。近場さぐりだけでは展望が見えないので時々遠投して遠くを探るが、無反応の時間がただただ過ぎてゆく。とにかく今回の三里浜は今まで経験したことの無い釣り方でなければ釣れなかった。基本的には波口でコトンコトンと静かに誘いながら1匹釣れたらそれを他のキスの宣伝に利用しながらまたリールサビキで静かに静かに誘う。それでも中々ダブルでは来ない。
「我慢我慢ガマン・・・。」
1投げ15分近くかけたかもしれない。近場なのに手返しが悪い非効率的な釣りを続けなければならなかった。結局、第1試合はこのペースで終了1分前にやっとダブルを追加し8匹に終わった。目に見える範囲では最も釣ったようだが同じエリアでも型の良いのが出たところがあるようで難しそうだ。ファイナルに行くにはおそらく最低でも2試合の合計順位が7(例えば3位と4位とか2位と5位)にならなければならないだろう。まずは5位以内に入らなければほぼ可能性が無くなる。
再び地獄の砂浜歩き、クーラーや竿を持っての歩きは本当に辛い。投げは体力がなければ勝負にならない・・・日頃の運動不足を嘆きながら遥か遠い大会本部を目指した。検量の結果は8匹で120g強、しかし、なんとかグループ5位を確保した。ギリギリ次を狙える位置だ。支給されたファミリーマートのしゃけ弁当を食べ次の抽選クジをひく。嬉しいAブロック!最も歩かなくても良いエリアだ。しかし1回戦最も釣れていないところでもある。日も上がりただでさえ食い渋る午後、辛抱の釣りを強いられそうだ・・・。
近投、遠投、なかなか当たりは無い。隣の人は力糸の後半の距離で誘っている。まさに手が届くような距離の釣りだ。
「これが北陸の釣りか・・・。」
そういえば数年前に新潟に来たときもシーズン初期にもかかわらず波口でしか釣れなかった。あの時は新潟の海岸が波口に溝が広がる海岸が多いのでそこを魚が移動するのだと思っていたが、ここ三里浜はそんな地形でもない。エリアによっては4色半にポイントがるのはわかっているが見える範囲では遠くを探っている人はいないようだ。遠投、波口を繰り返し最後は波口で冗談ではなく5cmづつさびくつもりで誘った。近場の釣りに慣れていないのであたりはあるがバラシも多い。結局かけきれずに4匹の貧果・・・。ここで釣れる手の内の広さがないとダメだなと痛感する。ほとんどの人が5〜7匹程度だが釣る人はきちんと釣る。まさに釣技を試される結果となった。
Aブロック2回戦最下位・・・合計ポイント13点・・・64人の参加者のうち真中より少し下あたりの順位だろう。この結果をしっかりとうけとめ次の釣りを目指さなければならない。
皆、仕掛けが本当に繊細だ。小鈎、細糸、そして丁寧な誘い・・・学ぶことは多い。正直まだ学ぶべきことを把握しきれてないのが今の俺のレベルだ。全国大会で知り合った徳島の山村さんが3位にはいった。全国ファイナルでも去年のうさはらしを存分に果たして欲しいとエールを贈る。こうしてトップキャスターと知り合いになれることが全国大会の最も大きな財産かもしれない。学ぶべき目標を持ち、自分と比較しながら己に何が足りないのかを知る。それが大会の後自分がきちんとやっていかなければならないことだ。直後にすぐ敗因がわかるほどトップの釣りは単純なものではない。だが、やる以上は目指さなければ、トーナメントに出る釣りの道を選んだのだから・・・。
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